5.2.2 AWS の特徴
AWS は、いわゆるレンタルサーバや VPS とは違って、リソースが文字通り Elastic です。画面をポチポチやれば、メ
モリや CPU パワーなどを自由に変更することができますし、その変更幅もかなり大きくとれます。また、料金体系も従
量課金となっていて、物理的なマシンやノードの単位に縛られず、「 電気・ 水道のようにコンピュータ資源を使う」感覚
を実現しているといえるでしょう。周辺サービスについても、種類と内容がともに充実しているだけでなく、日々強化さ
れていっているので、便利さでは他の業者の追従を許していません。いろいろな API を提供していて、「 AWS としての
機能」を別のアプリなどから操作できる (らしい) というのも興味深いところです。まともに使うと料金は割高なようです
が、札束さえつっこめば、インフラの構成に制約されることなく、小さくはじめたサービスをそのまま拡大していけます。
そのため、コンシューマ相手にノるかソるかのサービスを提供したい場合や、大規模な設備投資が長期的に見合わない場合
などに、とても良くマッチします。
5.2.3 Debian の使用
AWS は、 Xen をベースに、 RedHat を Amazon 内で魔改造したもので構成されています。残念ながら Debian の出
る幕はないわけですが、その上で動かす AMI と呼ばれる仮想 OS イメージについては、某荒木さんが Debian のイメー
ジをメンテされていると聞いたことがあったので、今回はそれを使うことにしました。
5.3 やってみた
5.3.1 アカウントの準備
まずは、 AWS 上にアカウントを作成する必要があります。途中で必要になるので、クレジットカードと、着信が受け
られる電話を手元に用意しておくといいでしょう。アカウント ID は、物販用の amazon.com (amazon.co.jp ではない)
の情報を流用できます。特に待たされたりすることもありませんし、すぐ完了できるかと思います。
5.3.2 EC2 でハマってみる
AWS には綺羅星のごとくベンリ系のサービスがこれでもか! と並んでいるのですが、今回は VPS がわりに使うだけで
すので、とりあえず EC2 で OS インスタンスをたてることにします。
AWS は世界各地にデータセンターをもっており、使用するデータセンターを「 リージョン」として選択できます。日本
人が日本人向けのインスタンスをたてるわけなので、ここでは無難に tokyo リージョンを選びました。また、リージョン
内にも「 エリア」として複数のネットワークが存在し、冗長化などに役立てることができるらしいのですが、今回は単体ホ
ストしか使いませんので、「 どこでもええわい」としておきます。
EC2 で使う AMI は公式には Debian のイメージが存在しないので、コミュニティ版を使うことになります。私はこの
部分でなかなか手間取りました。ポイントは、
• 基本的に用意されている Debian のバージョンは stable
• 展開した後のログインでは、 AMI イメージ毎に特定のログイン名を使う (AWS コンソールで作成した SSH 鍵が
起動時にそのユーザにセットされる)
あたりでしょうか。私は Wheezy を使うつもりだったので、最初は Wheezy のイメージ名を検索して使用してみた
のですが、なんとログインできません。通常は AMI の情報としてログインユーザ名が提示されているらしいのですが、
見つけられなかったため諦めました。幸い、 http://wiki.debian.org/Cloud/AmazonEC2Image に情報がまとまって
いたので、ログイン名のわかる Squeeze イメージではじめて、後から dist-upgrade することにします。余談ですが、
dist-upgrade すると grub の処理でコケます。最初から grub は消しときゃいいのになぁ、とは思いました。
インスタンスが起動したら、固定 IP を割り当てます。 AWS コンソールから Elastic IPs の画面を開き、新しい IP を
アサインして、起動したインスタンスとの紐づけを行います。なんでも Elastic IP はインスタンスで使っている限りは無
料らしいのですが、インスタンスを停止した状態で握り続けていると有料になるそうです。実験などで一時的に使うだけ、
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